人身傷害保険を利用して過失が大きい依頼者の賠償金を獲得した事例
1.依頼のきっかけ
Aさん(60代女性)は、原付バイクに乗って道路を走行中、車線変更をしようと右側の車線へ入った際に、右側車線直進中の自動車と衝突し、左方へ転倒して、左足関節損傷と左足関節帯断裂、そして左中足骨骨折を負いました。
Aさんは、自身の過失が大きいことから事故の相手方の任意保険会社から一括対応による治療費の支払をしてもらえませんでした。そのためAさんは加入する任意保険会社の人身傷害保険を利用することで治療費を保険会社に支払ってもらい入通院をしていました。3ヶ月ほど入院し、その後に通院をしていましたが、今後どのような解決になるのか不安になり、弊所へご相談にいらっしゃいました。
2.交渉の経緯
Aさんは、入院に約3ヶ月、通院に約5ヶ月かかり、合計8ヶ月で症状固定をむかえました。しかしいまだ左足に痛みを覚えていましたので、後遺障害等級認定の手続を経て14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当するとして後遺障害の等級認定を獲得しました。
後遺障害の等級認定手続が終了したことから、担当弁護士は今回の事故でAさんに生じた損害を計算し、事故の相手方へ損害賠償の請求を行いました。
本件はAさんの過失が60%以上認められてしまうのは避けられない事故でしたので、相手方へ請求した損害は全損害の40%分にあたる金額です。
事故の相手方の弁護士代理人と交渉を重ねましたが、示談交渉では一切保険金を支払うことができないとの回答でした。
一方、人身傷害保険で支払われる慰謝料等の保険金は約10万円でした。人身傷害保険は、Aさんと保険会社との保険契約であらかじめ金額が決められており、人身傷害保険金を増額のために保険会社と交渉しても増額されることはほぼありません。
しかしAさんの加入している保険会社の保険約款には、「裁判の判決や裁判上の和解により損害額が決定された場合、人身傷害保険の保険金を約款で決められている金額ではなく、裁判により決定された金額を支払う」という内容の規定があったため、Aさんは裁判を起こすことになりました。
裁判の結果、判決でAさんの過失は60%、相手方の過失は40%となりました。裁判所は、Aさんの損害のうち40%分を相手方がAさんに支払うよう命じる判決を下しました。また、人身傷害保険の保険金が10万円からAさんの過失分60%分へ増額されました。これは判決の中でAさんの全損害額、過失割合が判示されたため上述した保険約款により人身傷害保険の保険金が増額されたためです。
結果、Aさんは、事故の相手方から約40%、自身加入の任意保険会社から約60%分を獲得し、約100%分の賠償金を獲得することができました。
3.担当弁護士から一言
事故で自身の過失が大きい場合、相手方の任意保険会社に一括対応をしてもらえないことが多々あります。そのため健康保険を利用して治療費を自己負担して通院をするか、人身傷害保険に加入している場合には自身加入の任意保険会社に立替払いをしてもらい通院をすることになります。
人身傷害保険とは、かんたんに言えば、保険加入者の過失の有無やその割合とは関係なく、保険会社から人傷保険にかかる約款で定められている損害額算定基準に基づいて算定された損害額相当の保険金の支払を受けられる保険です。自身の過失が大きいとき、人身傷害保険に加入をしていると事故の相手方には賠償の請求ができない部分を人身傷害保険金でまかなうことが可能になることがあります。
しかし、保険約款で定められている損害額算定基準は、ほとんどの場合が自賠責保険の基準に類似するので裁判基準の算定よりも低額になることが多いです。そのため保険約款に判決や裁判上の和解により賠償金が決定されたときには、人身傷害保険金の増額が可能な場合があります。
もし人身傷害保険の保険金を増額できれば、自身に過失が多く認められてしまう場合であっても、損害の大部分を保険金から補填することができます。
過失が大きいからといって諦めずに、まずは弁護士に相談をしてみてください。
交通事故でのお悩みは、下関・宇部・周南・岩国の法律事務所、弁護士法人ONEにご相談ください。