後遺障害における併合とは?
1.併合
交通事故によって後遺障害が残存したとき、身体の複数ケ所に症状が残るケースは少なくありません。
後遺障害は「目」「耳」「鼻」「口」「神経系統の機能または精神」「頭部、顔面、頸部」「胸腹部臓器(外生殖器含む)」「体幹」「上肢」「下肢」の10部位に区分され、さらに機能ごとに35種類の系列に細分化されます。
例えば交通事故で怪我した時「眼球の視野障害(系列4)と左足の機能障害(系列30)が残った」という風になります。
このように系列が異なる身体障害が複数残存したとき、重い方の等級で認定する、もしくは重い方の等級を1〜3等級分繰り上げて新たな等級を認定することを後遺障害等級の「併合」といいます。
基本的なルールは以下のようになります。
- 5級以上の後遺障害に2つ以上該当 → 重い方の等級を3つ繰り上げ
- 8級以上の後遺障害に2つ以上該当 → 重い方の等級を2つ繰り上げ
- 13級以上の後遺障害に2つ以上該当 → 重い方の等級を1つ繰り上げ
- 14級の後遺障害に2つ以上該当 → いくつ障害があっても14級のまま
例を出すと、両耳の聴力を完全に失って(4級)、さらに両足の足指を全て失った(5級)場合は、ルール(1)に当てはまるので、重い方の4級が3つ繰り上がって1級となります。
これを併合1級といいます。
2.併合のルールに適用されないもの
原則として後遺障害の併合は上記のルールに従って行われますが、適用されないケースもあります。
- 組み合わせ等級が定められている場合
等級表で、左右を合わせた障害の等級があらかじめ定められている場合があり、これを「組み合わせ等級」と呼びます。系列が異なる部位も異なる複数の後遺障害を別々の系列であっても例外的にまとめて評価する規定で、組み合わせが定められている場合には、組み合わせ等級が優先します。 - 序列を乱す併合は行われない
後遺障害の序列とは、同じ系列の障害同士の上下関係のことです。併合のルールに従い、そのまま等級を繰り上げると、その等級よりも軽い症状なのに同じ等級になってしまうなど、繰り上げによって等級の序列が乱れる場合には上記の併合ルールはてきようされません。
障害の程度が大きいものを上位、小さいものを下位と扱います。序列を乱す併合とは、明らかに障害の程度に差があるのに、下位の障害が併合で繰り上げられて上位の障害の等級に並ぶことを言います。併合では、そうならない範囲で等級が定められます。 - 要介護の後遺障害が複数ある場合
併合は介護の必要がない後遺障害等級にのみ適用され、要介護認定の第1級と第2級には適用されません。介護を要する後遺障害について、第1級(常時介護)と第2級(随時介護)が定められています。この場合、後遺障害が複数残ったとしても、被害者の状態は常時介護か随時介護かのどちらかしかなく、両方の病状が同時に存在することはありえないので、状態に応じて1級か2級、どちらかの等級による賠償を受けるだけです。
他にも、異なる系列であっても同一系列の障害と判断される場合や、1つの障害が別の障害に含まれる場合、1つの障害の派生で発生した別の障害など併合ルールの適用外と判断されるものがあります。
3.併合には弁護士相談を
後遺障害が複数残ると、被害者のその後の生活負担はとても大きくなります。負担に見合う適切な損害賠償金額を請求するには、併合のルールを正しく活用し、後遺障害の申請をすることが重要です。
しかし個人での申請は簡単ではありません。併合を含めた適切な後遺障害の等級認定を受けるには、書類申請だけでなく、通院や治療に関しても的確な対応が必要となります。交通事故で後遺障害が身体に残りそうな場合は、医学的知識にも精通した弁護士のサポートをできるだけ早い段階から受けることをおすすめいたします。
交通事故でのお悩みは、下関・宇部・周南・岩国の法律事務所、弁護士法人ONEにご相談ください。