交通事故による休業損害の賠償金額

1.休業損害

休業損害は、交通事故により怪我をして仕事を休まざるを得なくなり、それよって収入が減少した損害のことです。
交通事故にはさまざまな賠償がありますが、休業損害についても被害者は加害者に賠償を請求することができます。

2.休業損害の計算式~自賠責保険基準

自賠責保険における休業損害の計算方法は以下の通りです。

1日あたり6,100円×休業日数

1日あたりの金額が6,100円を超えることを資料で証明した場合は、1万9,000円を上限として実際の収入に基づいて計算されます。


休業日数とは、交通事故を原因として実際に仕事を休んだ日数のことですが、有給休暇を使った日も含まれます。

3.休業損害の計算式~任意保険基準

任意保険における休業損害の計算基準は、公表されていません。
自賠責保険基準に基づいて算出されているものと考えられます。

4.休業損害の計算式~裁判基準

損害賠償請求の裁判や弁護士による示談交渉における休業損害の計算方法は以下の通りです。

1日あたりの基礎収入(実収入)×休業日数

1日あたりの金額は一律ではなく実収入で計算するという点が、自賠責保険基準と異なっています。
なお、被害者の職業によって日額の計算方法が以下のように異なります。

  • 会社員(給与所得者)の場合
    「事故前3ヶ月の合計給与額÷稼働日数」から1日あたりの基礎収入を求めます。基本給だけでなく、賞与や各種手当ても含まれます。
  • 自営業者の場合
    「事故前年の申告所得額÷365日」から1日あたりの基礎収入を求めます。
    基本的に確定申告書上の「課税所得」を基準とします。申告していない場合または所得を過少申告している場合は、資料によって「収入-必要経費」の実際の金額を証明できれば、その金額をベースとすることも可能です。
  • 専業主婦(主夫)の場合
    実収入はなくても家事労働には経済的価値が認められるので、「平均賃金÷365日」で1日あたりの基礎収入を求めます。
    平均賃金は、厚生労働省の統計調査により作成された「賃金センサス」の数値を用いるのが一般的です。2019年賃金センサスでは、女性(学歴計)の平均賃金は388万円とされています。

5.休業損害の請求方法

企業にお勤めの方は、まず勤務先から休業損害証明書を発行してもらう必要があります。
所定の用紙に休業日や支給されなかった賃金の額、事故前3ヶ月に支給された賃金の額などを記載してもらい、会社代表者の印鑑を押してもらいます。
記載済みの休業損害証明書に源泉徴収票や給与明細を添付して加害者側の保険会社へ提出すれば、請求手続きは完了です。
自営業者の場合は休業損害証明書は不要です。確定申告書の控えや納税証明書などを保険会社へ提出することになります。

6.交通事故で休業損害を適切に受け取るためのポイント

休業損害で損をしないためには、なにより正確な内容の休業損害証明書が重要です。保険会社へ提出する前に記載内容を確認しましょう。


とくに事故前3ヶ月に支給された賃金額の記載に、賞与や各種手当てが反映されていないケースが多くありますので、注意が必要です。
また実収入が1日あたり6,100円よりも多いときは、実収入に基づいて請求することも大切です。
任意保険会社は被害者から実収入に基づく請求を受けない限り、1日あたり6,100円で休業損害を計算することがあるからです。
ただし実収入が1日あたり6,100円よりも少ない場合は、あえて自賠責保険基準で休業損害を請求することも可能です。

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